平成 19 年度 海外政務調査レポート

2008年2月7日

はじめに

横浜市政の一翼を担い、様々な政策提言を行いながら思うことがある。それは、横浜で優れている点は他の地域でも取り入れるべきであり、また、他の地域で優 れていることは横浜でも取り入れていくべきである、ということ。そういう意味では他都市の事例を研究する意義は大きい。そして、グローバル化が急速に進む 現代では国内の他都市にとどまらず、海外の事例を研究することも不可欠と言える。

私自身はかつて 2 度にわたり米国に居住した経験をもっている。一度目は高校 2 年生の時、 Youth For Understanding(YFU) の交換留学生として一年間、インディアナ州にホームステイした。そして、二度目は 30 歳を過ぎてから、妻、長男とともにニューヨーク州のシラキュース大学院に留学し、そこで長女が産まれた。卒業後はマイクロストラテジーという IT 企業に就職し、ワシントン DC 郊外に移り住んだ。私が横浜市会で行った政策提言のいくつかは、これらの経験に基づいたものである。

今回、四年半ぶりにアメリカへ渡った。平成 19 年 10 月 26 日から 11 月 2 日にかけて、次の 3 つのテーマをもってサンディエゴ、ロスアンジェルス、ワシントン DC へ調査活動に出かけた。

  1. 横浜市とサンディエゴ市との交流について
  2. カリフォルニア州での日米経済交流について
  3. CIO 大学について

本報告書はこれらのテーマについて現地視察を含めて調査した結果をまとめたものである。このレポートが横浜市役所で政策立案に携わる職員の刺激となり、最終的には横浜市民に利する政策へとつながっていくことを熱望している。

1. 横浜市とサンディエゴ市との交流について

(1) サンディエゴ市概要

フリー百科事典『ウィキペディア( Wikipedia )』によると、
カリフォルニア州サンディエゴ (San Diego) 市は、アメリカ最南西端に位置する街。西は太平洋、南はメキシコに面する。人口 122 万人余 (Census 2000) を擁する全米 7 位、カリフォルニア州でロサンゼルス市に次ぐ第 2 位の市。「 America’s Finest City 」として、また、大リーグサンディエゴ・パドレス (Padres) 、アメフトサンディエゴ・チャージャーズ (Chargers) の本拠地として広く知られている。 1542 年にポルトガル人のファン・ロドリゲス・カブリヨが発見し、 1769 年にスペインの布教所が初めて設立された、カリフォルニア州最初の白人の町であることから、「カリフォルニアの生誕地」「カリフォルニア文明の発祥地」と も呼ばれる。

私が訪問した際にはコンパクトなアメリカの中規模都市という印象を持った。アメリカの都市はどこでも町の中心部であるダウンタウンがある。ニューヨーク、 シカゴ、ロスアンジェルスといった大都市ではダウンタウンには人が溢れ、まるで東京のような人の往来が見られる。しかし、それらの大都市を除くと一般にア メリカの多くの小都市のダウンタウンでは地盤沈下が著しい。人通りもまばらで活気がない。

私が大学院時代にすごしたニューヨーク州シラキュースなどもそういったダウンタウンを持っていた。サンディエゴのダウンタウンは確かに大都市ほどの活気は みなぎっていなかったが、飲食店が多く立ち並ぶ通りはにぎやかであった。また、ダウンタウン全体がコンパクトにまとまっていることも印象的だった。アメリ カ合衆国西海岸の最南端に位置しているせいか港には外国航路の客船も寄航する。港の華やかなエリアもダウンタウンの一部。ダウンタウンで空を見上げると行 き交う飛行機が目近に見えることに驚く。これはひとえにダウンタウンに隣接して空港があるからだ。

ダウンタウンにはトローリーと呼ばれる路面電車が走っている。これらはダウンタウンを通り抜けて郊外までつながっている。郊外の駅に行くと駅前に駐車場が 整備されており、パーク・アンド・ライドを意図したことがうかがえる。しかし、住民に話を聞いてみると、やはり車社会のアメリカである。あまり乗ったこと がないとの答えが返ってきた。カリフォルニア州では環境負荷軽減の観点からさまざまな規制が強化されていると聞く。サンディエゴでトローリーが見直される 日も近いかもしれない。

コンパクトなのはハード面だけではない。サンディエゴ市の市議会議員は 8 名、教育委員は 5 名。いずれも選挙で選ばれている。いずれも小選挙区制で、選挙区から一人が選出されている。今回の訪問中に教育委員の一人、キャサリン・ナカムラ氏と面談 する機会に恵まれた。サンディエゴでの教育の課題について、高い貧困率や多民族都市ゆえに基礎的な英語力の問題などを指摘していただいた。また、山火事に よる避難生活から日常に戻っていく最中でもあり、教職員の復帰などを思慮しながら学校の再開に頭を悩ませていた。会話のなかで特に印象的だったのは、「 私の 教職員も避難している」と自らが責任を持った管理者であることをうかがわせていた。これが少数の選挙されたものによる行政運営の真髄と感じた。横浜市会も 議員定数削減によって議会が同様の使命を負うようになることを期待したい。

(2) 友好姉妹都市としての歴史

今回、サンディエゴを訪問したきっかけは横浜市と姉妹都市提携を締結して今年で 50 周年の節目を迎えることである。 1957 年 10 月に両都市が友好姉妹都市提携を結んだ。先人たちの様々な思いがあったものと推察される。詳しい交流史は参考資料の「横浜とサンディエゴの交流」(出所  横浜市)を参照されたい。半世紀の歴史を振り返ると興味深い点がいくつか挙げられる。

なんと言ってもユニークなのは動物交流である。 1957 年 10 月に提携が結ばれた翌月の 11 月には横浜からサンディエゴにオシドリが贈られている。ズーラシアで人気のオカピーはサンディエゴから贈られている。両都市の交流の証として動物たちが太 平洋を渡っていることに驚かされる。

また、相互に記念品を贈呈しているが、それらが後世にしっかりと受け継がれているところがすばらしい。今回の訪問時にも現地を訪れた「友好の鐘」。緑溢れ る海辺の公園に掲げられた純和風のぼん鐘である「友好の鐘」は 1958 年に横浜市から寄贈された。そして今もすばらしい音色を奏でる。サンディエゴからは「ミッションベル」が寄贈され横浜市庁舎で美しい鐘の音が再開されたの は昨年のこと。まさに交流の歴史である。

最後に青少年教育の交流である。カリフォルニア大学サンディエゴ校( UCSD )と横浜市立大学の間では研究者、学生の相互交流が行われている。また両都市の青少年交流団をお互いに派遣し受け入れている。こういった経験を積んだ青少 年が将来、両都市に貢献することにつながれば幸いである。 地方自治体が総務省、外務省及び文部科学省の協力の下に実施しているのが「語学指導等を行う外国青年招致事業」 ( The Japan Exchange and Teaching Programme 以下「 JET プログラム」)であるが、アメリカのワシントン DC 近郊では JET プログラムの卒業生の人的ネットワークが確立していて、いわゆる親日派米国人コミュニティを築いている。横浜およびサンディエゴの青少年交流を経験した 人々がこういった友好的なコミュニティを築いていくことを期待する。

(3) 今後の友好姉妹都市交流に対する期待

半世紀にわたる横浜とサンディエゴの交流の歴史には先人たちの熱い思いが積み重なっている。この礎の上に新たな歴史を刻んでいくのが私たちに課せられた課 題である。そう考えたとき一つの疑問が浮かぶ。どれだけ多くの横浜市民がサンディエゴとの友好姉妹都市関係を知っているだろうか?決して多くはなかろう。 全体からすると一部の市民による熱心な活動に支えられているといわざるを得ない。これからの半世紀はより多くの横浜市民にサンディエゴとの交流に関与して もらえるような仕組みづくりが必要と考える。

例えば、高校生の交換留学がある。横浜とサンディエゴの高校生がお互いの町にホームステイするプログラムを設けてはどうだろうか?私が高校生の時に経験し た YFU による交換留学プログラムでは参加学生が留学先の国は選べても都市は選べないという制約があった。これはひとえにこのプログラムがグローバルなネットワー クに基づく規模の大きなものだからだろう。それと比較すると友好姉妹都市の関係に基づく交換留学プログラムであれば限定的な地域に留学することになるので 参加学生も行き先がどこになるかわからないという不安から開放される。そういう意味でも既存の交換留学プログラムにない独自性を発揮できるものと思う。

また、今回の訪問中に意見交換をする中で新たな可能性が見出せた。 NPO の交流である。 NPO の活動においては日本と比較してアメリカは進んでいる。そのアメリカに学ぶところは多いはず。かといってアメリカの NPO 運営のあり方が完璧というわけではない。アメリカの NPO も軌道修正を行わなければいけない部分もあるようだ。そうであれば相互の NPO がその運営方法などについて情報交換することは大いに意義のあることである。しかし、 NPO で活動する人たちが情報交換のために頻繁に日本とアメリカを往来することは現実的には難しい。

そこで、横浜、サンディエゴ両市がビデオ・カンファレンスのための情報通信機器を整備し、それをそれぞれの地域の NPO が使えるようにすることでお互いの NPO 活動の拡充を支援してはどうだろうか?横浜市には横浜市国際交流協会( YOKE )という市民の国際交流と外国人居住者の支援を目的とする財団があるが、ここにビデオ・カンファレンス施設を設置し NPO の国際的なコミュニケーション拠点とすることを提案したい。

2.カリフォルニア州での日米経済交流について

(1) 横浜市北米事務所移転の背景

横浜市の北米事務所はこれまでニューヨークに置かれていたが、今年度後半からロスアンジェルスに移転をした。その背景としては、次の二点が挙げられる。

  1. ロスアンジェルス近郊には先端産業が集積しており企業誘致のための情報収集力の強化がはかれる。
  2. 日本貿易振興機構( JETRO )との共同事務所とすることで経費の削減が図れる。

今回の訪米では移転先の日本貿易振興機構ロスアンジェルス・センターを訪問した。ロスアンジェルスのダウンタウンの一角に立つ高層ビルの 26 階に JETRO のオフィスはあった。オフィスの中の一部屋が横浜市の事務所であり、高橋三男駐在員が派遣されている。 IT やバイオといった産業界では世界最先端を走る企業が集まっている地域だけに、その動向を的確にウォッチすることは大変重要である。高橋駐在員の活躍に期待 したい。

(2) 南カリフォルニア経済圏

カリフォルニア州は南北に伸びる地形である。南北に分けたとすると北部の中心がサンフランシスコで南部の中心がロスアンジェルスになる。その南カリフォルニアの経済圏について JETRO ロスアンジェルス・オフィスが作成した資料を引用し、概要を報告する。

1.経済概況

1 景気動向

カ リフォルニア州の経済動向は、 2006 年までの過去 3 年間、全米平均を 1 %程度上回る成長を記録するなど、好調を持続してきたが、足元の経済動向は、米国全体と同様に住宅投資の落ち込み等から減速傾向、カリフォルニア州の建 設・不動産業は州内総生産の約 2 割( 3,116 億ドル)を占めており、経済全体への影響が懸念される。

2 雇用
カリフォルニア州全体の雇用者数は 1,724 万人( 07 年 6 月)で、このうち南カリフォルニア管内のウエイトは 60 %を超える。他方、カリフォルニア州の失業率は、 2004 年の 6 %から低下傾向で推移し 06 年 11 月には 4.7 %まで低下したが、足元は若干上昇し 5.2 %( 07 年 6 月)となっている。

3 貿易
輸出入合計は、ロスアンジェルス通関分(ロスアンジェルス港、ロングビーチ港)が 06 年 1,576 万 TEU (対前年比 11.1 %増)と好調に推移し、地元の経済、雇用に寄与。特に、日本は、カリフォルニアからの輸出国の第 3 位となっているほか、カリフォルニアに所在する日系企業による輸出を通じて、地元経済に大きく貢献。輸入は、好調に推移する内需により、中国製品を中心に 大きく増加。

2.主要産業動向( LA 郡 07 年 1 月非農業雇用者数 403 万人)

1 製造業( 07 年 1 月 46 万人)
スアンジェルスは全米最大の製造業拠点( 2 位シカゴ、 3 位デトロイト)であり、州別に見ても南カリフォルニアだけで 2 位のテキサス州を超える雇用者数を確保。過去、雇用者は大幅に減少したものの(参考  90 年 81 万人)、高い生産性の伸びにより、アパレル、コンピュータ・電気製品、輸送機器、航空・宇宙、食品等多様な産業を維持している。

2 小売業( 07 年 1 月 42 万人)
2005 年以降、アルバートソンズの売却など地域の大型小売店の再編、不採算店の閉鎖が加速。このようななか、日本のコンビ二の進出が話題となる。

3 宿泊施設・遊技場等( 07 年 1 月 37 万人)
石油価格上昇による旅行関連サービス価格の上昇にも関わらず、趨勢としての旅行需要の回復、良好な米国経済情勢もあり、旅行・観光業は全体として良好。た だ、日本を始めとした海外からの旅行者は 2001 年のテロ事件の落ち込みから回復しておらず、誘致に向けた努力を行っている(ロスアンジェルス市は、 06 年に日本で観光キャンペーンを展開)。

4 専門及びビジネスサービス( 07 年 1 月 58 万人)
Sarbanes-Oxley 法の施行に伴う需要、投資資金に対する経営対策としての株式の非公開化、知的財産の不法コピー対策など会計、法務サービスは旺盛な需要。

5 映画(コンテンツ)( 07 年 1 月 13 万人(含 音響録画サービス))
2004 年後半以降、引き続き日本映画関連作品の公開と興行等での健闘が目立つ。
(参考) 06 年末には、クリント・イーストウッドが「硫黄島からの手紙」を渡辺謙主役で製作・公開し、ゴールデン・グローブ・最優秀外国語映画賞を獲得。また、アカデ ミー賞助演女優賞ノミネートの菊池凛子出演の「バベル」もあるなど日本、日本人に関連した作品が頻繁に公開され、評判も上々。

(3) JETRO LA の取り組み

今回の現地訪問で JETRO のロスアンジェルス・センターの特徴的な二つの取り組みを知ることができた。ひとつはコンテンツ事業の支援であり、もうひとつは米国での起業支援である。

1.コンテンツ事業支援

JETRO LA は世界的なエンターテイメント産業の中心地、ハリウッドをひかえているだけにこの分野への日本発のコンテンツを積極的に紹介している。映像、アニメーショ ン、音楽、アートなど日本発のコンテンツを積極的に米国マーケットに紹介していく総合的な仕組みとしてエンターテイメント・プラットフォーム・オブ・ジャ パン( EPJ )を立ち上げている。 EPJ では産業調査 / 分析、 ニュースレターの発行、ビジネスマッチングの支援、各イベントへの参加、セミナー / シンポジウムの開催、 EPJ 委員会の設置などを通じて日米間のエンターテイメント・ビジネスの促進を行っている。

2.米国での起業支援

JETRO LA では日本企業の米国での起業支援を行っている。カリフォルニア工科大学( CalTech: California Institute of Technology )のインキュベーション施設への入居を支援するなど積極的に日本企業の米国での起業を支援している。

(4) 今後の期待

横浜市の米国事務所がロスアンジェルスに移ったことで今後、益々 JETRO LA との協働が重要となってくる。 JETRO LA のリソースを活用しながら横浜市としてのサービス向上に努めることが肝要である。中期的には特に次の二点を提案しておきたい。

1.コンテンツ分野での東京藝術大学とのコラボレーション

横浜市は東京藝術大学大学院映像研究科キャンパスを誘致し、これを支援している。大学院映像研究科はわが国における映像コンテンツの創造、人材育成、研究 拠点となることを目標としている。ここから発信されるコンテンツをいかにハリウッドに伝えていくか、そこにはコーディネーターとしての横浜市の役割があ る。

2. JETRO LA でのインターンシップに横浜市民優先採用

多くの日本人学生が米国で学んでいる。米国の大学あるいは大学院ではインターンシップが卒業の必須条件となっているところも少なくないが、日本人留学生は インターンシップの受け入れ先を探すのに苦慮している現状がある。 JETRO LA は恒常的にインターンを受け入れているが、その多くが現地在住の日本人、日系人、あるいは日本人留学生など日本語が理解できる人材と思われる。そこで、横 浜市の米国事務所が同居しているということも考慮し、このインターンについて横浜市民を優先的に採用する仕組みを構築してはどうだろうか。これにより先の サンディエゴとの青少年交流に加え、横浜市民の青少年が米国で成長していく支援体制が拡充されていくと考えるところである。

3. CIO 大学

(1)横浜市での CIO 設置の動き

横浜市においては平成 19 年 9 月に阿部副市長が CIO=Chief Information Officer (最高情報統括責任者)に就任している。 CIO は全庁的な電子市役所の推進を確実かつ効果的に図っていくために設置された IT 化推進本部の本部長として本市の情報資産を無駄なく最大限に活用し、適切な費用対効果を実現するとともに、市民サービスのさらなる向上を目指している。
CIO 設置については私自身、議会で積極的な政策提言を行ってきたところでもある。以下に時系列で私の提言と、それに対する答弁を記す。

【平成 16 年第 4 回定例会 本会議 平成 16 年 12 月 14 日】

(鈴木太郎)

本市では電子市役所推進計画に記載されているシステム以外にもさまざまな業務システムを保有していると思いますが、それらの情報資産の共有化を進めるには 全庁的かつ総合的な視点に立ち、例えばITに関する十分な知識と情報化推進のための強力な権限を有する情報化総括責任者、いわゆるCIOなどによる強力な リーダーシップのもとに取り組むことが重要と考えております。現に総務省の調査では、都道府県の 51.1 %において、また市町村の 43.8 %においてCIOが任命されております。
こうしたことから統括的な体制を整備して情報化施策を効率的に進める必要があると思いますが、市長のお考えをお伺いいたします。

(中田市長)

統括的な体制を整備した情報化施策の効率的な推進についてのお尋ねでありますが、市民サービスの向上や行政運営の効率化に向けた情報化施策の推進に当たっ ては、統一的な構想のもとに関係部署が連携協力しまして全庁的な体制で取り組んでいくということが必要であると考えています。こうしたことから組織横断的 な推進母体として、実務に精通した関係部課長で構成します電子市役所推進会議を庁内に設置しまして総合的な視点に立ったシステム構築を進めているところで ございます。今後とも、こうした体制の充実強化を図りながら、そのリーダーシップのもとで効率的に情報化施策を推進していきたいと考えております。

【都市経営総務財政委員会 平成 17 年 11 月 15 日】

(鈴木太郎)

個人的にいただいた資料では、おおよそ 120 億円ですね。平成 15 年度が 120 億円余、平成 16 年度は 123 億円、平成 17 年度予算が 119 億円。全体を見渡すと、それだけの予算がかかっているのです。だけどこれは当然総務局の予算ではなくて、各局の中で予算編成されているわけですね。そうす ると、各局の事業の中の優先度合いの中でこれだけの、いわゆる電子市役所に係る予算化が図られているわけです。 120 億円ですよ。今、電子市役所推進計画の推進についても、要は全庁的なことなので取りまとめに時間がかかっているということですが、これは私、もっと集中的 にやらないといけないと思うのです。

集中して、権限を持った方がいて、そこで進めていかないといけない。何度もいろいろな機会に申し上げているように、私は横浜市の中に最高情報責任者を置く べきだと思います。そうしないと、今だって、この 120 億円というのが出てこないわけでしょう。予算も本来は一括して、そこでやるべきだと思うのです。そうしないと、コンピューターシステムの中での優先度合い も見えないし、その中で重複したむだというものも当然出てくるはずです。

そもそもIT化というのは、業務を効率化させて市民満足度を高めるためにやっていらっしゃるわけだから、それを全体で見なかったら、そういうことができて こないと思うのです。今回は旧計画と新計画の間で電子市役所推進計画は間があいてしまうわけです。恐らく今年度末までにできないと思います。そういうこと もあるし、予算も、こうやってばらばらにやっていることを考えたら、この局再編のときにもそういうことを考えていただきたいし、次期電子市役所推進計画の 中でも、組織のあり方というのをいま一度明確に考えていただきたいのですけれども、どうですか。

(大谷総務局長)

電子市役所推進計画につきましては、リバイバルプランの見直しの中で、横浜市全体としての整合性を図っていく必要がございます。そういった点では、御指摘されたことのないように、一生懸命頑張ってまいりたいと思います。

また、ただいま横浜市全体としての責任者を決めて、そのもとで一元的にという御指摘でございましたが、現在のところ電子市役所推進計画そのものといたしま しては、私どものIT活用推進部を中心にやっておりますが、鈴木太郎委員の御指摘は、もう少し大所高所に立った地位の人を含めてといった御指摘だと受けと めております。そういった御意見も十分に参考にさせていただきながら、次期リバイバルプランの中ではきちんと取り組んでいきたいと思っております。

【平成 18 年 予算第二特別委員会 平成 18 年 2 月 28 日】

(鈴木太郎)

全体最適化による財源創出、そして今申し上げたような、避けては通れない本来的な課題をその財源を使って解決していくという、そういう横浜型の電子市役所 の推進というものをぜひこれから考えていただきたいと思いますが、そのためには私はやはり経営的な観点から本市全体のこれらの情報化政策、まさに全責任を 担っていく最高情報責任者、いわゆるCIOの設置が不可欠であると思っております。

リバイバルプランの検証にも外部アドバイザーからCIOの設置を検討すべきという意見が出ております。総務省からの指摘もあります。その結果、政令市では 5市においてCIOが設置をされております。札幌市では外部の専門家を副市長に据えてCIOにしています。その結果、都道府県全体の 51 %、市町村の 44 %においてCIOが設置済みであります。
そこで、今後の本市の情報化の推進に当たっては、最高情報責任者、CIOなどによる強いリーダーシップのもとに取り組むべきと思いますがどうか、伺います。

(大谷総務局長)

本市の情報化を効果的に推進するためには、業務プロセスの改革を前提とした情報システムの構築でございますとか、人材、ハードウエア、ソフトウエアなどの IT資産の保持や、お話のございましたような調達の最適化などに積極的に取り組む必要があります。こうした取り組みを推進していくためには、最高情報責任 者、CIOの設置も含め推進体制の見直しなどについて検討していくことが必要と考えております。

こうした議会での議論もあって阿部副市長が CIO に就任することになったわけである。これまで設置されていなかった CIO が設置されたことは大きな前進であるが。 CIO は設置すれば良いというものではなく、本来、期待されている役割を果たしていくことが重要である。

(2) CIO の役割

横浜市では CIO 、 CIO 補佐監、そして IT 化推進本部が一体となった推進体制を構築することで、次に掲げる目標達成に向けて取り組んでいる。

  1. 全庁的総合調整機能の強化
  2. 電子市役所推進を含めた IT 施策実現のスピードアップ
  3. 日々進化する最新 IT 技術・情報の活用等

米国では 1996 年にクリンガーコーエン法という、言わば IT マネジメント改革法が制定されている。これは、連邦政府の情報システムに関する活動を策定し、監督する CIO を省庁ごとに配置するよう定めたものである。同法はさらに、連邦政府 CIO に必要なコアコンピタンス(重要な知識・能力)を 12 分野、 70 項目にまとめている。これらの項目は年を経るごとに改定がなされていて、時代に応じた知識・能力が求められていることがわかると、同時に求められる知識・ 能力から CIO の役割が自ずと明らかになっている。

通商産業省がこれら 12 分野について解説を行っているので、以下に記載する。これらの要件から合衆国連邦政府が考える CIO の役割が浮き彫りになってくるので、横浜市においても今後の電子自治体政策推進の参考にすべきである。

① 政策、組織

CIOは府省で最も重要なポジションにいる一人であり、また、情報という観点で組織内を横断的に担当することから非常に広範囲の人々と対話する必要があ る。また、CIOが活躍する世界は、技術、法律、政策および政治的な動向の変化が非常に早い上に、仕事の大きさや展望が大きいことから非常に大変な仕事で ある。

② リーダーシップとマネジメント

マネジメントの考え方は重要であり、CIOは、マネジメントをリーダーシップと組み合わせて展開させなければならない。CIOは、クリンガーコーエン法や 同法で規定された組織において、どのような業務をおこなうかを理解していなければならない。変化の激しい世界でビジョンを達成するためには、個人の持つ内 部的スキルは必須なものである。

③ プロセス / 変更管理

CIOの最も重要な役割は、府省の中においてもっとも先見の明のある者となることである。最終決定や変更の権限を持つCEOやCOOと強く関わっていることもあり、CIOは、プロセス・マネジメントという面からの変更、トップダウンによる変更を理解する必要がある。
また、CIOが組織開発ないしその重要性について熟知することは大切である。
さらに、政府のイニシアチブを変化させるような電子政府やスマートカード等、新規のビジネスや技術を発掘、紹介していく流れを作っていくことが重要である。

④ 情報資源戦略および計画

IT は業務に価値を与える重要なものである。業務計画と情報資源管理( IRM )計画は同時に行う必要があるように、 IRM 戦略計画とビジネス戦略計画は同時に作成し、 IRM を組織全体の業務機能や計画と統合していかなければならない。
また、 IRM 計画は、電子政府において重要性が増している省庁横断的な問題や、省庁間の計画策定の問題に対してなんらかの解決策を与えなければならない。計画は、総合 的であり、かつ、プラットフォームやベンダー固有でない柔軟性を持つ必要があり、ビジネス戦略全体ともバランスがとれていなければならない。 IT アーキテクチャを理解することも重要である。

⑤ パフォーマンス調査:モデルと方法

IT による解決策が、業務計画の目標を達成し、その必要性を充足するのか、また、国民・企業と職員両者の満足を図ることができるのか評価する仕組みとしてバラ ンスト・スコアカードが考えられる。CIOは、利用できる業績調査の種類とシステムの見通しを知っている必要があり、 IT の価値その評価プロセスに対するシステムとしての展望を包括的にとらえている必要がある。CIOはベースライン評価手法、業績評価サイクルにおける定性 的・定量的な手法 (ROI 等 ) の重要性を理解しなければならない。

⑥ プロジェクト / プログラム管理

プログラム管理とプロジェクト管理は、コミュニケーション、有効な意志決定およびチーム構築等、同じスキルを要求している。しかし、プロジェクト管理とプログラム管理の間には拡張性・粒度の違いがあるため、その 2 つを区別して取り組んでいく必要がある。

⑦ 資本計画策定および投資評価

CIOが資本計画策定および投資評価を理解することは重要なことである。クリンガーコーエン法では、CIOに投資評価の権限を付与している。成功している 企業も同様である。クリンガーコーエン法は IT 管理を各府省に分散させ、省庁がその計画や投資、実装を自律してできるようにしている。資本計画策定は、民間のビジネスと同様に必要とされている。
新しい法律やガイダンスのが提供される場合、 IT 投資の決定のために、ビジネス・ケースの分析等によって支援される必要がある。この参照すべきビジネス・ケースはCIOを含んだ投資評価委員会において提 案される。財務的なマネジメントと調達とは資本計画策定を通じて連携していく必要性がある。

⑧ 調達

CIOは、調達プロセスにおける環境変化とライフサイクル管理を理解しなければならない。CIOはリスク管理手順を順守した上で、組織全体にわたる革新的な調達環境を作り出さなければならない。CIOは調達モデルと手法の変更を監視しなければならない。

調達は (1) ビジネス目的の定義、 (2) 要求定義と承認、 (3) ソーシング、 (4) 事後管理という 4 つの段階を含んでいる。事後管理フェーズは複数年にわたって行われているので、技術サイクル、サイクルの長さの影響について熟知していなければならない。

調達は、資本計画策定や戦略プロセスに結びつく大きなアーキテクチャの一部である必要がある。支払いを行うので費用便益分析のコストの部分に相当する。 CIOは業務目的における自分の役割を理解し、組織の他のリーダーと提携していく必要がある。産業界での利用技術や製品と政府の調達で使う製品は大きく異 なることはない。
CIOとシニアマネージャーは、法律や規制によって政府が産業界に与えるインパクトを理解するとともに、特定の手法や調達プロセスを導入したときのインパクトについても理解しなければならない。

⑨ 電子政府 /e ビジネス / 電子商取引

電子政府、 e ビジネス、電子商取引はビジネスの環境や手法を変化させており、個々の省庁の行動やそのニーズを考える等の手法を変化させている。CIOは、電子政府の中 で、プロジェクト・マネージャー等の職員、サプライヤー等の関係者、国民・企業などの利用者を同じレベルで考えるように求めている。利用者は活動 / 情報などを知りたいのであり、情報やサービスを提供する組織の違いには興味は持っていない。各組織は単独でのサービスを考えるのではなく、一緒にサービス を行う相手を探す必要がある。

CIOは電子政府、 e ビジネスに対して戦略的な視点を有している必要があり、ビジネス・ケース分析や BPI/BPR を活用する必要性がある。プログラムにおけるのリーダーシップを持つ担当者は、業務を効果的に改善させる電子政府ソリューションの提案や実行に対して責任 を持つ必要がある。

電子商取引と違い、CIOは、電子政府と電子商取引に差があることを理解しておくべきである。省庁内、省庁間、外部顧客を取り扱う業務は、監督・報告義務 があるものもあり、セキュリティ/プライバシに関する懸念もある。このような重要な役割は本質的に政府が行うべきであり外注すべきでない。CIOは、電子 政府に関する実施項目を、リスク管理を行うことにより確実に実施しなければならない。

基盤となるインフラは電子政府の基礎となる。CIOは、新たなる技術を活用した電子商取引の継続的改善を可能とするモデルを構築・維持すべきである。

⑩IT セキュリティと情報の保証

IT セキュリティと情報の保証 (IA) は、電力通信などの重要インフラストラクチャの保護とも関係している。攻撃や事故、不十分な状況に対応する際に、可用性・完全性・信頼性を保護・維持でき るように、 IT とインフラ維持の関係性が明確になっている。国防総省は IA を可用性・完全性・信頼性・認証として定義している。
CIOは、常に業務が管理可能な範囲で均衡を保つようリスクを管理しなければならない。さらにコストとリスクのバランスという問題もある。CIOはリスク 分析や要求される保護レベルを決定するためにミッションクリティカルな情報を分析する必要がある。

⑪ エンタプライズ・アーキテクチャ

「技術的」と「技術」を区別しなければならない。CIOは、技術がどのように機能するかを提示することが求められ、技術的にはどうこうというのは求められ ていないことを理解をしてなければならない。CIOはツールの利点と弱点、どのように機能するか、何に対して効果を発するか、そしてどんな制限があるかに ついて理解している必要がある。

コミュニケーションスキルはCIOにとって必要不可欠である。組織において、技術担当者とそれ以外の人との間には大きな意見の相違がある。CIOは技術と 経営また技術と私の間の総括的な翻訳者としての役割を果たさなければならない。CIOは決定や判断を下すため、正しい技術的な質問をするとともに、その回 答を理解できなければならない。

CIOは最先端の技術が何なのかを知り、また、新たな技術について深く・広い理解をしていなければならない。CIOは効果的な決定をなすために、統計的な 手法を含めた、解析手法を利用できなければならない。CIOはビジネスルールが技術をリードすることを頭に入れつつ、組織を新たなるビジネス領域へと導く ための技術的ビジョンを持つべきである。

CIOが組織文化に精通していて、文化そのものだけでなく、その期待するものまで管理できることは非常に重要である。それゆえ、複雑な社会的・人間的問題 を容易に解決できるよう、技術と同様に人間的なスキルも必要不可欠である。CIOは技術そのものと技術に適用するプロセスとを区別しなければならず、ま た、技術的問題にはシステム的アプローチを用いなければならない。

⑫ 技術

CIOとそのスタッフはデスクトップ技術ツールの使用や応用方法に精通している必要がある。

(3) 養成機関としての CIO 大学

先述のとおり米国では連邦政府の様々な機関において CIO が必要であると言う認識があり、それを法で定めている。連邦政府はクリンガーコーエン法によって連邦政府 CIO として必須のコアコンピタンスを定めるだけでなく、教育体制も整備している。それが今回、訪問した CIO 大学である。こう言うと「 CIO 大学」という大学がひとつあるという印象を与えてしまうかもしれないが、実際はそうではない。

今回、我々は現地へ赴く前に事前勉強会を開催したが、その際に NTT DATA AgileNet L.L.C. の岡田和也氏から CIO 大学に関してレクチャーを受けた。岡田氏は現在、同社のワシントン DC オフィスに勤務し、日本人としては初の CIO 認定証を授与された人物である。岡田氏によると、「 CIO 大学」という大学が物理的に存在するのではなく、連邦政府からの要件を満たした特定の大学・学科の総称である。連邦政府 CIO 評議会が主宰、連邦調達庁( GSA )が管理運営。教育の実施は GSA に認定された 6 大学が各校独自に行う。

6 大学は次のとおり。

  • カーネギー・メロン大学
  • ジョージ・ワシントン大学
  • ジョージ・メイソン大学
  • メリーランド大学
  • ラ・サール大学
  • シラキュース大学

CIO 評議会が 12 分野・ 72 項目の素養を特定し、その素養を身に付けるための 549 の学習項目を導出。各大学は CIO の資格を与えるものではなく、 CIO に必要な素養を学んだことを認定する。

今回の訪米で我々は岡田氏の案内のもと、ジョージ・ワシントン大学とジョージ・メイソン大学の担当者から説明を受けるとともに意見交換を行った。

ジョージ・ワシントン大学のプログラムはテクノロジーに強い人が入学の前提となっている印象を受けた。情報システム修士のプログラムをスタートするには、 プログラミング、システム分析、データベース、統計の 4 科目を履修済みでなければいけないという条件がある。技術系科目の比重が高いプログラムとなっているが、それらの科目を通じて強調しているのは、 IT は業務のサポート機能ではなくて、組織の目標や使命を達成するために極めて重要な役割を担っているということ。そのためには CIO はリーダーシップを発揮して、情報資源を戦略的に活用すると同時に、組織における重要な資産と位置付けることが求められている。

授業は夜間に開講されており、仕事と両立しながらプログラムを進めていくことができる。学位を取得するまでの期間は個々のペースによる。最終的に必修科目 と選択科目で 30 単位を取得すれば同大学から修士号が授与されると同時に CIO 大学の認定証も授与される。

一方のジョージ・メイソン大学は、比較的技術系科目のウエートが低く、そのため MBA (経営学修士)的な内容となっている。リーダーシップ、テクノロジー、システムシンキングを教育内容の三本柱としている。同時に入学した学生は同一のスケ ジュールでプログラムをすすめていくことになる。 1 月からプログラムはスタートし 18 ヶ月間に及ぶ。授業は毎週土曜日の午前 8 時から午後 5 時の間に開講されるので、仕事を続けながら参加することも可能。

ただし、二年目の 6 月には一週間の海外研修が課されており、これは必修となっている。学生の多くはワシントン DC エリアの企業や政府で情報部門に所属している人が多く、海外からの留学生は少ないとのこと。

(4) 今後の期待

CIO 大学の実情を調査すると、米国連邦政府において CIO が期待される役割や使命が次第に理解できてくる。単に技術の専門家でもいけないし、技術のわからない指導者でもいけない。基本的にはその両方を持ち合わせ て、 IT を重要な経営資源として活用していくリーダーシップが求められている。

横浜市においてもそういったリーダーシップが同じように求められている。例えば、横浜市全体では 100 億円を超える年間 IT 予算が計上されているにもかかわらず、それを一元管理する機能はない。全体最適化を強力に推し進めるリーダーシップとしての CIO はますます重要性を増すに違いない。では、それだけの経験や能力を持った適当な人物がいるかというと、なかなか難しい。そういう中、阿部副市長には初代の CIO に就任していただいたが、期待される役割を十分に理解していただいた上で活躍してもらいたい。

また将来の CIO 候補者ということを考えると、米国連邦政府が想定しているような資質を身に付けている人物が必要になってくると思われる。そのためには、今から市役所内部 でふさわしい人材育成に取り組んでいかなければいけない。現場で OJT に取り組むことも重要であるが、対極的な見地から技術とマネジメントの双方を身に付けた人材を育てていくためには専門の教育機関へ職員を派遣することも検 討するべきと考える。その際には、国内にそのような教育機関が希少であること、また、 CIO 大学が丹念に検討されたプログラムを提供し、実績をあげていることから、 CIO 大学への職員派遣も検討に加えるべきと考える。

参考資料

横浜市会議員 戸塚区選出 鈴木太郎 facebook

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